学習とサービス・アプリ開発の記録

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画像自動生成AIと著作権についてのSTORIA法律事務所の記事についての備忘録

学習メモ

Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像自動生成AIと著作権 | STORIA法律事務所を読んで、備忘録として要点を記述

  • 2 第1 論点の全体像
    • 論点には下記の3つがある
      • 論点1.「AIソフトウェアを生成するために他人の画像や文章などの著作物を勝手に収集して利用することができるか」
      • 論点2.「自動生成された画像に著作権が発生するか」(論点2)
      • 論点3.「学習に用いられた画像と同一の画像が『偶然』自動生成された場合、著作権侵害に該当するか」
  • 3 第2 論点1「AIソフトウェア を生成するために他人の画像や文章などの著作物を勝手に収集して利用することができるか」
    • AIソフトウェア を生成するために他人の画像や文章などの著作物を勝手に収集して利用することは著作権法上問題ないか
    • 問題1.「著作権法上問題ないか(著作権侵害にならないか)」と問題2.「契約(利用規約)違反とならないか」の2つがある
    • 著作権法上問題ないか(著作権侵害にならないか)」
    •  日本著作権法においては、AIソフトウェアの生成に必要な著作物の利用行為(データの複製や翻案)については、原則として著作権者の承諾を行わなくても可能であるという権利制限規定が存在する。この条文は世界的に見るとかなり特殊
    • 日本著作権法が適用されるケース
      • 作業者、サーバが日本 → ◎「日本著作権法が適用」
      • 作業者が日本、サーバが外国 → ?「結論ははっきりしておらず日本著作権法が適用されないリスクがある」
      • 学習対象の著作物が外国企業、外国人の所有物、著作物の利用者が外国人等の状況だが、著作物の利用行為が日本国内 → ◎「日本著作権法が適用」
    • ただし、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には学習用と出会っても、無制限に利用できるわけではない
      • どのような場合に、著作権者の利益を不当に害すると判断されるか。愛知靖之「AI生成物・機械学習著作権法」によれば、「将来における著作物の潜在的販路を阻害するかどうかで判断する」とある
      • しかし、この記事の著者は、上記の考え方に懐疑的
    • 「私が描いたイラストをAI学習に使うのは禁止にします」と表明することで、実際にイラストが学習に利用されることを禁止できるのか
      • 著作権法の条文等を、契約により無効化することを「オーバーライド」と呼ぶ
      • 一方で、経産省の「新たな知財制度上の課題に関する研究会報告書」によれば、著作権法30条の4をオーバーライドするような契約は、「その範囲において、公序良俗に反し、無効とされる可能性が相当程度あると考えられる」という記載がある
    • どのような場合に「契約が成立した」といえるのか
      • そもそも、著作権者が一方的に「私が描いたイラストをAI学習に使うのは禁止にします」と表明するだけでは「契約」が成立していないと考えられる
      • 「契約」が成立するためには契約当事者双方の意思が合致することが必要とされているため
    • まとめ
      • 「私が描いたイラストをAI学習に使うのは禁止にします」と表明したとしても、そもそもそのような表明は著作権法30条の4に違反して無効の可能性がある
      • 一方的な表明が契約として成立することはないため、結論的にはそのような表明は少なくとも法律的には意味がない
  • 4 第3 論点2「画像生成AIにより自動生成された画像に著作権が発生するか」
    •  画像自動生成AIを利用して画像を生成した場合、当該画像に著作権が発生するか。
      • 日本を含むほとんどの国の著作権法の下では、著作権が発生するのは人間の創作物に限られる。AIにより「完全自律的に作成」されたコンテンツには著作権が発生しない
      • 人間がAIを道具として利用したにすぎないのか、AIが完全自律的に生成したと言えるのかどうかがポイントとなる
      • 乱暴に言い切った場合
        • 人間がAIの利用に際して具体的かつ詳細な指示をしていれば → 著作権が発生する
          • 詳細かつ長い呪文を唱えて画像を生成した場合には「創作的寄与」があり、当該画像について著作権が発生する可能性が高くなる
          • 本記事の著者は「AIにより自動生成される複数の生成物から、人間が好みのものを選択する行為」についても「創作的寄与」に該当する可能性は十分にある」としている
        • 人間が簡単な指示しかしていなければ → 著作権が発生しない
          • 詳細な指示、複数制作物からの選択が人間により行われる場合は著作権が発生することを考えると、著作権が発生しないケースは少数かもしれない
          • なお、人間の創作的寄与がない商標でも商標出願はできますし、登録を受けることもできると思われる
        • 自動生成された画像に著作権が発生する場合、誰が著作権を有するのか
          • 画像生成AIソフトウェアの利用規約で「このソフトウェアで作成された画像には著作権が発生します」とか「このソフトウェアで作成された画像の著作者はサービス提供者です」と記載されていても無意味
          • ただし、「ユーザの下で発生した著作権がサービス提供者に無償で移転する」という建て付けは可能
      • 5 第4 論点3「学習に用いられた画像と同一の画像が『偶然』自動生成された場合、著作権侵害に該当するか」
      • そもそも著作権侵害に該当するのか
        • 著作権侵害の成立には、1.類似性、2.依拠性の2つが必要
          • 1.類似性:当該著作物が既存著作物と同一・類似であること
            • 「作風」「スタイル」レベルでしか類似していない場合、には類似性を満たさず、著作権侵害には該当しない
          • 2.依拠性:他人の著作物に接しそれを自己の作品の中に用いること
            • ある創作物がたまたま他人の著作物に似ていても、当該他人の著作物に依拠することなく独自に創作されたものであれば非侵害
        • 著作権侵害に該当する場合に誰が責任を負うのか
          • 仮に類似性、依拠性が肯定されるような場合(著作権侵害に該当する場合)には、誰がどのような責任を負うか
        • (1) ユーザ
          • ユーザが画像生成指示を行って、当該指示により既存画像と同一・類似の著作物が生成された場合には、当該ユーザ自身が既存著作物の「複製」行為を行っていることになる
          • 私的領域内であれば適法だが、販売、配信した場合には著作権侵害
        • (2) ツール提供者
          • 著作権侵害における間接侵害の判断
            • 判断基準は「『間接侵害』等に関する考え方の整理」(平成24年1月12日・文化審議会著作権分科会司法救済ワーキングチーム)が整理した第2類型と類似していると考えられる
            • 具体的には「侵害発生の実質的危険性を有する物品」という客観的要件、「侵害発生を知り、又は知るべきでありながら、侵害発生防止のための合理的措置を採ることなく」という主観的要件から、この判断基準は構成される
          • 学習用データセットの生成・提供行為を行った場合
          • 画像自動生成AIソフトウェアの生成・提供した場合
            • 十分な量の元データからなる画像自動生成ソフトウェアの場合
              • 必ずしも既存著作物と同一・類似の著作物が生成されるとは限らない
              • 仮にユーザの行為が著作権侵害に該当する場合でも、そのようなソフトウェアの生成・提供を行った者には法的責任はないと考えられる
            • 「当該学習済みモデルを利用すると、既存著作物と同一・類似の著作物が非常に高い確率で生成される学習済みモデル」の場合
              • 既存作品と同一・類似の作品を自動生成する能力が非常に高く、著作権侵害をもたらす危険性が高く、前述の間接侵害の判断基準における「侵害発生の実質的危険性を有する物品」という客観的要件を満たす
              • 「侵害発生を知り、又は知るべきでありながら、侵害発生防止のための合理的措置を採ることなく」を満たす場合には法的責任を問われる
            • 画像自動生成AIソフトウェア生成ツールを提供した場合
              • 「侵害発生の実質的危険性を有する物品」という客観的要件を満たさないため、法的責任を問われない

 

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